第77回のご報告
尾崎楠馬先生ゆかりの所蔵品
ライオン宰相・浜口雄幸
尾崎先生にとっては、浜口雄幸は同郷の友人にあたります。浜口氏から尾崎先生に宛てられた書簡を紹介。見中8 回鷹野様の寄贈による本文に、「現代風解釈」を添えます。二人の睦まじいおつき合いが彷彿とされます。さて、その浜口雄幸の生涯は、城山三郎著「男子の本懐」に詳しいのですが、城山氏がそれを記すにあたって第1の資料として用いたのが「随感録」。尾崎文庫には、遺稿集としての「随感録」が収められています。「非賣品」との文字が見られるので、生前親交のあったゆかりの人々にのみ配られた1冊でしょう
17枚の年賀状
デジカメやらパソコンやらインクジェットやら、と「年賀状」の世界にも「IT」の波は押し寄せていますが、それらとは無縁の、原点ともいい得る年賀状を紹介します。
左の2枚は、尾崎楠馬先生の年賀状。大正15年のものと昭和3 年のもの。どちらも極めて簡潔で、人柄がしのばれます。残る15枚は、いずれも尾崎先生宛のもの。20世紀前半の時代を語る年賀状です。
尾崎先生 静物画
尾崎先生の小品を紹介します。「美術」の中西忠司先生がコメントを寄せてくださいました。
色の美しさ、優しさ、形の面白さに心打たれる。
生き生きした生命感に、尾崎先生の温かい心が表されている。
彩色のない、素描のみの2枚からは、花や魚を見る秀れた観察力、忠実な写生力がうかがわれる。
繊細な線と自然色の調子、「にじみ」「ぼかし」の技法もよく、描きなれた作品。
構図も、空間の取り方が効果的で、感心した。
昭和の初期に描かれたことを考え合わせると、色あせもなく、貴重な作品群といえる。
戦火で失われるもの
図書館書庫奥の「尾崎文庫」には、尾崎先生の個人的な蔵書が並んでいるのはもちろんのこと、学校史料保管庫のような性格もあるようです。創立間もない時期の記念アルバムもあれば、他校の記念誌も収められています。そのなかで、意外な資料に出会いました。
「昭和18年6月捧故鈴木長雄先生之霊向笠校児童」と題された、赤茶けた冊子は、太平洋戦争で亡くなった見付中学11 回生・鈴木長雄さんを悼んだ、かつての教え子が記した弔辞。
仮名遣い等、多少は改めましたが、全文を紹介します。ぜひ、一読してください。