私は今現在陶芸家として、磐田市にて陶芸活動をしております。

陶芸との出会い

陶芸の道に入るきっかけは森町の小國神社境内にある「みもろ焼」にて、田米先生に陶芸を習ったことがきっかけでした。

陶芸を習い始めた当初、工房で売られている先生の作品を見て「マグカップ3800円は高いな〜、カップなら100均でも売ってるし…」と思っていたことはここだけの話。今となっては、自分自身が作る側に回ったことで、その一つのマグカップを作る上で必要な技術・土や釉薬へのこだわり、その作品の背景にある労力が理解できるようになったので「そりゃそのくらいのお値段は」と思える人間になりました。きっと何か物事の背景だったり、本質的な部分だったりを感じられるようになるには「自分がやる側にまわる」しかないのでしょう。

作品を完成させるまではリスクの連続

陶器が完成するまでの工程は皆さんが想像する以上に時間がかかります。基本的な制作の流れとしては、「土づくり→成形→乾燥→素焼き→釉掛け→本焼き→仕上げ」によって作品が出来上がるのですが、作品を完全に乾燥させるために1〜2週間、大型の作品だと乾燥までに1ヶ月以上要するものもあります(急速に乾燥させると土の収縮が追いつかずに割れやすいため)。仮に成形がうまくいったとしても、乾燥段階でヒビが入り、素焼きをしては割れ、釉薬(色付けの塗料)をかけて本焼きをしては色がうまく出ず。そんなリスクを掻い潜った作品だけが生き残ります。

思い通りにならない、ままならなさが制作への意欲に

事前にできる準備としてはやるだけのことをやり、それでも結果は思い通りにならないというのが陶芸の日常であり、目の前の作品に起きた現象に対して原因を考え改善していく。その繰り返しの中で作品の精度を上げていく。「まあ、思い通りにはいかないだろう」という考え方が自然と身に付きました。

AIが発達し、投げた問いに対しての答えが一瞬で返ってくるようになった世の中で、「思い通りにならないこと」が制作への意欲を育んでいるような気がして、この「ままならなさ」を存分に味わえたらと思っています。