日本初6人乗り旅客機「天竜10号」を 完成させた福長飛行機製作所
高校を卒業して約50年、そのうちの35年間は富士通株式会社でシステムエンジニアとして主に中央官庁、特に防衛省を担当した。退職後は独立して日本航空宇宙工業会などに属して航空機製造や運用に関わるIT関係のコンサルティングをしている。卒業以来、拠点は東京になってしまったが、今となって何か故郷に残せるものはないかと日々考えている。
江戸時代、ライト兄弟より100年以上前に空を飛んだ「鳥人」浮田幸吉が晩年を過ごした家が見付にあることをご存じだろうか。また、1922年大正時代に掛塚の地で日本初の6人乗り旅客機「天竜10号」を完成させた福長飛行機製作所という、航空機製造の先駆者が磐田には居る。米国で成功しているホンダジェットも元はと言えば遠州から出た会社だ。
欧米では航空機の設計や維持もデジタル化され、開発効率性や運用コストもサイバー空間上にモデル化し、迅速な設計変更が出来るようになっている。精密な部品製造や組み立て技術は重要だが、そもそもどのように使えるか、作る前にシミュレーション出来ることが最終製品を顧客が喜んで使うために最も大事なことではないだろうか。
次世代に通用するエコで愉しい軽飛行機を作れないか
我が国の航空機製造業は優れたものを作れば良いという考えからまだ逃れられていない。欧米は運用者のコストパフォーマンスが最も良いものを作るという価値観に移行している。そして、すでに20年のギャップがあると言われている。穿った見方をすれば、良い製品であれば運用時のコスト効率は二の次で良いという無意識の価値感があるのではないだろうか。
いま私の会社では、DX(デジタルトランスフォーメーション)の流行と防衛費の増額というタイミングで、この欧米との価値観の違いを狭めるべく欧米情報の提供や方法論の啓発を試みている。航空機を製造しようとしている皆さんには、その価値観の差異を認め、我が国が誇るべき底力である高い製造品質を活かしたモノづくりをしてもらいたいと思っている。
モノづくりの街磐田でも、竜洋に昔のような滑走路を再現し、小さくて良いので、次世代に通用するエコで楽しいデジタル設計による軽飛行機など作れないものかと夢想している。