演題「失敗は成功へのプロセス」 1月10日(水)

1月10日(水)、体育館において、浜松ホトニクス取締役社長の丸野正さん(高31回)が「失敗は成功へのプロセス」と題して講演し、一年生320人余が聴講しました。講演の概要は次のとおりです。

高校在学中は「地球物理学」に夢中

私は、高校在学中、プレートテクトニクス理論への関心から「地球物理学」に夢中となり、理学部への進学を強く希望したものの、地元企業への就職に結びつく工学部への進学を希望する親の期待に沿い武蔵野工業大学電気工学科に進学しました。大学卒業後、浜松ホトニクスに入社し、技術者として画像計測を担当して、ORCAーQuestなどを開発しました。

人間の目には見えない対象物を可視化する

浜松ホトニクスは、人間の目には見えない対象物を可視化する技術を持ち、科学の進歩や社会環境に貢献しています。富山県の神尾鉱山の地下1000mのところにあるスーパーカミオカンデには、浜松ホトニクスが開発した光電子増倍管が1万1千個設置され、宇宙から飛んでくる素粒子の一つであるニュートリノをキャッチしています。

小柴昌俊さんや梶田隆章さんは、この施設を活用してニュートリノの研究をされ、ノーベル物理学賞を受賞しました。研究者の熱意と浜松ホトニクスの技術が合体して受賞に繋がったものといえます。

2023年以降も2万本の光電子増倍管をスーパーカミオカンデに納入する計画があり、こうした取組は、会社として利益を上げるためというよりは、科学の進歩に貢献したいからしているものです。

開発したデジタルCCDカメラ「ORCA-100」が販売不振 

浜松ホトニクスは、チャレンジすることができる会社、失敗を許容してくれる会社、自ら望んだことをやれる会社です。

35歳の頃、デジタルCCDカメラ「ORCA-100」を設計しました。優れた製品を開発したと思いましたが、当初は全く売れませんでした。こうした時は、売れない理由を考え抜くことが大切です。私は製品の性能だけに関心を向けていましたが、製品を取り囲む多様な要素(エコシステム)に関心を拡げることが重要であることに気付きました。そして、アメリカ市場で戦うこと、周辺機器メーカーと連携すること、世界で最も権威のある研究者にアプローチしようと考えました。

製品の魅力を自信を持って語り販路獲得

そして、バイオ研究の第一人者であるTed Salmon博士(ノースカロライナ大学)とお会いしました。博士は、細胞を生きたまま観察したいという願いを持っていました。ORCA-100を使用すれば、それが可能であることを説明すると、世界中のバイオ研究者に発信してくれ、そのことが契機となって、以前は門前払いであった企業からも注文が殺到するようになりました。

失敗から学んだこと

こうしたことから、次のようなことを学びました。

・世の中はある日を境に180度変わる

・失敗を解析することが成功へのチャンスに繋がる

・幸運の女神は自分でつかむものである

・欧米人と対等で英語で話し合うことが重要である

・相手のロジックを理解することが大切である

・自分の意見をしっかりと相手に伝える

磐南生に期待すること

15年以上にわたり、概ね一年の半分を海外で過ごしてきました。皆さんに期待することは、次のようなことです。

 1 世界で通用する人材になってほしい。

 2 欧米人のロジックを理解してほしい。

 3 英語の重要性を認識してほしい。

磐南卒業生の中からノーベル賞受賞者が生まれることを期待しています。文系生徒も頑張って欲しいと思います。

35歳でマラソンを始める 私の文武両道

35歳からマラソンを始め、52歳で「サブスリー」(フルマラソンを2時間台で走る)、54歳で「サブテン」(100㎞を10時間以内で走る)を達成しました。休日には常に走っており、45歳以降、5万5千km(地球を1周半位)走っています。

生徒たちは丸野さんのお話に集中して聞き入り、先輩の生き方から大きな刺激を受けたものと思われます。

丸野社長の講演に耳を傾ける生徒たち(体育館)