ポートレート写真 「現代の名工」に選ばれる

 卓越した技を持ち、その道の第一人者を表彰する国の「現代の名工」に2019年11月に選ばれた。2020年11月、一筋の道につくし、それぞれの道で確かな功績を残した人に贈られる秋の褒章「黄綬褒章」を授与された。

 姫路城にほぼ近い、85年の歴史のある老舗フォトスタジオで、七五三、入学式、成人式、結婚式、家族写真等、人生の節目となるポートレート写真を撮り続けてきた。また。本業の傍ら自由創作活動にも長年向き合ってきた。

総合貿易商社退社 肖像写真家に弟子入り

 豊岡村(広瀬村→豊岡村→磐田市)出身。東京銀座の総合貿易商社に2年間勤め、海外赴任が予定されたとき退職。幼少時代から「手に職を」という両親の教えなどもあり、また恩師に相談する等考え抜いた末、「一生を捧げ、自身を磨ける仕事に」と、姫路市で写真館を経営する岳父(故)、芸術家肌で肖像写真家の下へ弟子入り、34年間を供にした。その後、妻と二人三脚で写真の道をひた走りに走って五十年が経った。

 ただ写真は趣味程度だったため、大阪の写真専門学校にて2年間基礎知識を学び、1969年から姫路へやってきた。

人の内面的な美しさを一枚に仕上げる

 「写真は光の芸術」。撮影の際には、光を最小限にし、必要なところだけ柔らかく照らす。被写体の表情に加え、その人の内面的な美しさを、奥深く立体感の溢れる一枚に仕上げる。作品はいろいろな写真展で入賞、入選を重ねてきた。五十年間出品し続けている国画会にて、43年目にして漸く会員推挙、審査員となる。

追及したい「写心」

 江戸の終わりに写真術が伝えられた。お侍さんたちが、真を映し出すことから写真と名付けた。その真は心に置き換えられる。肖像写真作家として、「写心」が撮れるよう追求したい。「いい写真を創るには審美眼を磨け」という教えを大切にしてきた。今や一億総カメラマン。だからこそ、光の芸術の品格を守りたい。来年2月、満八十歳になる。感謝!

創作写真 「エチュード」 1972年兵庫県展金賞・近代美術館賞