鰻丼と秘伝のタレ
今年の夏は、梅雨が特別に早く開けた。
猛暑は私の住む静岡市にも迫りきて、気持ちで夏に負けちゃいかん!と、自分と妻と子供を奮い立たせるため、先日鰻を食べに行った時の話である。
老舗の鰻屋さん。美味しい鰻はここだよ!と声を掛けられるように、食欲をそそるいい香りが、お店の外まで広がっていて、お店の前に待つ人の列もずうっと連なっている。
ついに席に通されると、間髪入れずに鰻重お願いします!と注文。しばらくして、待たせたな。ゆっくりお食べ。と言っているかのように、ずんと構えた鰻重が目の前に。家族揃って頂きます!と一口食べると、幸せ満点だ。鰻重よ、ありがとう。今年の夏も乗り切れそうだ。何より格別なのが、創業当時から代々受け継がれてきた秘伝のタレ。私たちがこの味に頷くように、昔の人もこの味を目当てにしていたんだろうなんて想像する。
変わらない味でいながら、長く人を惹きつけるのって本当にすごいなあと思う。そういえば先日テレビ番組で、イタリアンの有名シェフがこんなことを話していた。いつも美味しいって思ってもらうためには、実は、毎回ちょっとずつ美味しくなってなきゃダメなんだと。なるほど、秘伝のタレ、創業当時から〝変わらない味〟も、本当のところは日々進化し、変化しているのだ。それゆえ、いつの時代においても人を惹きつけることができるのだ。
秘伝の何かを見つけるべく
磐田南高校は今年100周年だ。100年前も、私が学生だった頃も、そしてこの先も、多くの学生が磐南に集う。そこには脈々と受け継がれ、時代に揺さぶられ、進化する〝秘伝〟の何かがあるに違いない。私は磐南を卒業して11年、今年で30歳だ。今は公務員として働きながら、妻と子の3人で慌ただしく賑やかな毎日を送っている。卒業生の諸先輩方と比べると、まだまだ人生未熟者であるが、〝秘伝〟の何かを見つけるべく、日々ちょっとずつブラッシュアップしていきたいなあと思う。平凡な日々のなかで、そんなことを考えている今。